「古代歴史文化賞」記念シンポジウム/古代への想い

日時・2018年2月10日(土)13:00~16:30
会場・銀座ブロッサムホール(東京都中央区銀座)
主催・奈良県 協力・島根県、三重県、和歌山県、宮崎県 後援・読売新聞社

プログラム
主催者挨拶 奈良県知事 荒井正吾
第1部 基調講演「縄文人とダイズ」
小畑弘己氏(熊本大学教授(第5回古代歴史文化賞大賞受賞者))
第2部 古事記よみ語り「日御子 イワレビコとイツセ、東を目指す」
浅野温子氏(女優)
第3部 パネルディスカッション「古代によせる想い」

<パネリスト>
荒井正吾(奈良県知事)
小畑弘己氏(熊本大学教授)

<コーディネーター>
関口和哉氏(読売新聞大阪本社)

主催者挨拶/開会

開会に先立ち、荒井正吾奈良県知事が主催者として挨拶しました。

第1部

基調講演「縄文人とダイズ」(熊本大学教授 小畑弘己氏)

ダイズの祖先種のツルマメは日本に起源がありますが、栽培種であるダイズは、弥生時代に稲作とともにやってきた植物だと考えられていました。2007年の私たちの発見によってそれが覆され、ダイズが縄文時代に存在していたことが分かりました。縄文人は植物を巧みに操っていたのです。

ダイズが見つかったのは、土器の中にスタンプのように残っている「圧痕あっこん」からです。熊本で何例も出ているイネ科の植物の種に見えるものはダイズの「へそ」の部分ではないかという指摘を受け、長崎県の大野原遺跡から出た資料を見直したところ、柿の種だと思っていたものが扁平へんぺいなダイズだと分かりました。確証を得るため、穀物屋でありったけのマメを買い、へその形を見比べ、水につけて膨張する様子を調べました。私たちが見つけた圧痕は、扁平なダイズが土器の粘土の中に紛れ込んで、粘土の水分を吸って細長く膨張した姿だったのです。私はこれを「クマダイ」と名付けました。縄文時代草創期の遺跡から発見されたツルマメに比べ、晩期のクマダイは大型化しており、人が選別して栽培したことも証明できます。さらに、近年の調査では、大量のコクゾウムシの圧痕が全国の縄文時代の遺跡から出ています。定住的生活様式の始まりを示しており、その中でダイズやアズキ、クリなどの栽培も始まったと考えられます。縄文時代を見直す動きの一つとして、縄文人の食や生活に対するイメージを変えたいと願っています。

第2部

古事記よみ語り「日御子 イワレビコとイツセ、東を目指す」(女優 浅野温子氏)

第2部では、女優の浅野温子さんによる古事記の「よみ語り」が行われました。2003年から自身のライフワークとして始めたもので、全国の神社や世界遺産などで開催しています。古事記や神話、古典の諸地域民話など、古くから読み継がれてきた日本独自の物語に独自の解釈を加え、現代語で脚色。生演奏に合わせて声色を自在に変え、さまざまな役を一人で情感豊かに全身を使って表現する圧巻のパフォーマンスに、会場中が引き込まれました。

第3部

パネルディスカッション

○舞台上にはパネリストの奈良県知事及び熊本大学教授小畑弘己氏、コーディネーターの関口和哉氏が登壇し、古代によせる熱い思いを語り合いました。

○「古代への想いについて」
奈良県知事 荒井正吾

日本は島国ですが海流に乗ってやって来た様々な人種や文化が混じり合い、独自の文化となりました。各地に入ってきたものが古層となって残って、また新しく地域ごとに発展しています。
日本の固有物か、外から伝わった外来物かという視点ではなく、その場所で育まれた文化として、いとおしく慈しむことができる感性が、文化の根、文化の芽、文化の花を育てます。唐や、唐を経由した大陸の文化が入って来て、大きく花が咲き、奈良の文化として立派に残されたというのは、奈良の誇りでもあります。
文化財の持つ背景やその解説は難しく、世界を視野に入れた時の活用の難しさはありますが、日本文化の古層を発見、発信するのが奈良県の文化財行政の役割だと考えています。

○「考古学に関心を持ったきっかけについて」
熊本大学教授 小畑弘己氏

子どもの頃、顕微鏡を買ってもらい、湖の水からミジンコを探しました。その時の興奮を、今も同じように感じています。小さなものを一つひとつ見つける喜びが、新たな発見への原動力になっているのです。
私の研究は、「見ようとしなければ見えないもの」が対象です。住居跡や遺物にばかり目が行っていた時もありましたが、視点を変えて遺跡を見ることで、土器の中に眠っている化石が見つかったり、遺跡の土の中からいろいろな情報が得られたりするようになりました。これまで捨てていたような小さな土器や土なども含め、遺跡の資料を丹念に掘り起こして、科学的に、人が検証できるようなデータをきちんと示しながら、歴史を語っていきたいと思っています。

○関口記者

歴史考古学を担当する専門記者として、20年ほど奈良県を中心に遺跡や文化財についての取材をしています。昨今の歴史離れに加え、活字離れ、出版離れも叫ばれる中で、書籍、活字文化を通して歴史を学ぶことの重要性は、私たちの暮らしの中で欠かすことのできないものになっていると思います。古代歴史文化賞が、国民の皆さん方の歴史や文化への関心を高めるのに大いに役立ち、これからも継続していくことを願っています。

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